トランプ米大統領が、米国民に生成AIブームの一端の所有を認める構想を打ち出したことを受け、投資家は注目すべきAI関連銘柄の選定に奔走している。初期の資金は既に動いているが、その動きは一様ではない。
エヌビディア、オラクル、マイクロソフトはいずれも同じニュースで取引されている。ただし、資金フローとオプション動向は三者三様であり、この分裂がウォール街がどの企業を勝者と見なしているかを示している。
エヌビディアは本AI関連銘柄リストの筆頭である。その理由は、政策がまず同社の半導体を経由するためだ。2025年末時点でAIデータセンター向けGPU収益で約86%のシェアを握る。同社は既存のハードウエアを通じてAIアクセスの拡大を狙う。
6月5日にトランプ米大統領は、AI関連企業が米国民に持分を与える方法を検討中と表明した。同週にもAI企業経営者と会談予定。政権は既にインテルなど半導体企業やレアアース、量子技術企業にも出資している。
ここに課題がある。政府による出資はAI需要にとっては強気材料だが、株主には一長一短となる。希薄化、価格上限、政治的制約などが企業収益力を損なうおそれがある。この緊張関係が資金流出入に表れる。
機関投資家の資金流入出を示すチャイキン・マネーフローは-0.16へと急低下した。春先のプラス水準からの反転だ。大型ファンドは方針確定前に持ち高調整に動いたもよう。
プット・コールレシオも警戒感を示す。オープン・インタレスト比率は0.84近辺で、5月の0.80未満から上昇。依然コールが優勢だが、ヘッジも増えている。
両指標とも同じ結論を示す。賢明な資金は政策が定まらぬうち利確を進めている。
エヌビディア株は208ドル近辺で、きょうは約1%高。4月の安値164ドル台から上昇チャネルを維持する。上昇シナリオは221ドルの回復で232ドル台を視野に入れる。ファンCEOによる価格統制力と需要拡大が下支え。
下落シナリオは、持分希薄化懸念で204ドル割れとなれば194ドルチャネル支持線への調整を警戒。
221ドルラインは、もう一段高と194ドル再試の分岐点。
オラクルは、政府のAIインフラ強化の中核Stargateパートナーであり、本AI注目株リストに加えた。上場企業の中では政府旗艦AI案件との結びつきが最も強い。ゆえに、公的な持分計画の恩恵が波及する。
エヌビディアと異なり、オラクルはキャパシティを販売する。政府の関与拡大は追加のコンピュート契約増を意味し、希薄化リスクが乏しい分、上振れ効果は純粋。これが資金流入につながっている。
需給環境も強い。オラクルが2026年会計年度第4四半期決算を6月10日に発表予定。アナリストは好決算を予想し、複数行が直前に目標株価を引き上げた。TDカウエンは6月8日に300ドル目標を示した。
チャートも強気を示唆。オラクルは4月安値からほぼ垂直に約88%急騰し、250ドル付近でピーク。そこからはやや調整の横ばいだが、売り圧力は5月末水準まで後退し、一服も終盤との兆候。
チャイキン・マネーフローは4月末からプラス転換し、その後も一貫して高水準。250ドル超で0.39まで上昇、その後はやや調整しつつも依然プラス圏。大口資金は撤退していない。
プット・コールレシオはトランプ米大統領の6月5日発言後に変化。出来高比率は0.76から0.39へ低下、コールへの資金流入が加速。一方、オープン・インタレストは0.95でプット優位を維持し、大口ポジションは依然下値リスクに備える構図。
オラクル株は214ドル近辺、きょうは約0.5%高を維持する。強気シナリオは208ドル上での推移と、決算・AI需要を背景に250~253ドル回復。弱気はセクター入替やドル急騰により178ドルを割り込む場合で、フラッグパターンが無効化される。
250ドルの上値は、ブレイクアウトと178ドルへの下落を分ける水準。
マイクロソフトは本銘柄リストの中で最も安全な選択肢として、AI銘柄の筆頭候補に挙げられる。同社はOpenAIの最大の出資者であり、OpenAIが議論の中心となっている。
両者の関係は直接的だ。ホワイトハウスとOpenAIのサム・アルトマンCEOは、チャットGPT開発企業への米政府出資について協議を続けている。マイクロソフトが同社の大口商業株主であるため、合意成立は同社のAI関連エクスポージャー再評価につながる。
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これは強気材料といえる。しかしマイクロソフトは3銘柄の中で最も出遅れている。その理由は資金フローに表れている。時価総額3兆ドルのソフトウェア大手を通じてAIに投資する場合、上昇余地が希薄化されやすい。また、米政府によるOpenAI出資は、マイクロソフトに依存する商業契約条件の見直しにもつながる可能性がある。
チャイキン・マネーフロー(これまで説明した機関投資家フロー指標)は0.03と、わずかにプラス圏。5月初旬には0.35近くまで上昇したが、それ以降は低下傾向にある。買いは存在するが勢いは鈍りつつある。エヌビディアで見られたような急激な資金流出ではなく、緩やかな減速。
プット・コールレシオも投資家の迷いを示す。出来高比率は0.67、建玉比率は0.47。コールが優勢だが、どちらにも明確な方向感がみられない。
マイクロソフト株価は、本日約1%安の415ドル前後で推移。強気な見方は427ドルを回復し、446〜459ドルのゾーンが目標。アジュール事業の成長とOpenAIの選択肢拡大が支えとなる。これらの水準は前回のスイングも考慮して浮上している。
弱気の展開では、出資条件への警戒感から397ドルを割り込むと、356ドル付近まで一段安の可能性が生じる。
427ドルの水準は、417ドル方面への下落と、397ドル割れの展開を分ける分岐点となる。

