中東情勢の緊迫化を受け、イラン革命防衛隊がホルムズ海峡を通過する船舶から通航料を徴収し始めた。商船三井のLNGタンカーなど日本関係船舶2隻が6日までに、相次いで海峡を通過したと報じられる中、支払い手段として人民元とともに暗号資産が指定されている事実が浮上している。日本の海運・エネルギー業界にとって、ドルでの支払いが認められず人民元か暗号資産が指定された「脱ドル通航料」にどう対応するかは、実務上・地政学上の難題となっている。
イラン革命防衛隊は海峡を通過する船舶から通航料を徴収し始めており、船舶は単に料金を支払えば通過できるわけではなく、事前に秘密の通航コードを取得し、人民元または暗号資産で決済を済ませた後、巡視艇の護衛を受けて海峡を通過する仕組みとなっている。
イランは各国を1級から5級に分類しており、「友好国」とみなすほど条件は緩和されやすく、交渉の開始額は通常、原油1バレル当たり1ドルで、決済は米ドルではなく人民元またはステーブルコインで行う。約200万バレルを積載できる超大型タンカーの場合、通航料は最大で200万ドル規模に達する。
暗号資産YouTuberで知られる「Crypto Rover」(@cryptorover)は3日、次のように投稿した。
この通航管理は議会での法制化に向けて動いており、イラン議員は国営メディアに「我々は安全を提供している。船舶が通航料を払うのは当然だ」と述べた。
日本の立場は複雑だ。商船三井によると、インド企業と共同保有するインド船籍のLPGタンカー「GREEN SANVI」が海峡を通過し、ペルシャ湾内に残る日本関係船舶は依然として43隻に上る。日本はイランの「友好国」分類において高いランクとは言えず、通行条件の交渉余地は限られているとみられている。
通航料の支払い手段として米ドルが排除されている点は、日本の海運事業者にとって前例のない対応を迫る。通航料の支払いは人民元や暗号資産で行われ、これまでにマレーシアや中国、インドなどの船舶が通航を許可され、通航料を支払ったケースもあると報じられている。
人民元払いは中国との取引実績がある事業者には比較的なじみがある一方、日米同盟を軸とする日本の外交方針との齟齬が懸念される。一方、暗号資産による国際送金は技術的には即時かつ無制限で可能だが、日本の会計・コンプライアンス体制において大口の暗号資産取引に対応した実務フローは未整備の企業が多い。
国連海洋法条約は領海内の無害通航(外国船舶が沿岸国の安全を害さない限り自由に通過できる権利)を認めているが、通航料徴収の規定はない。イランは同条約を批准しておらず、法的拘束が及ばない状態で既成事実が積み上がっている。インド政府は「航行の自由」を理由に支払い不要との立場を取るが、実際に支払いなしで通過を試みた船舶が引き返しを余儀なくされた事例も報告されている。現場の事業者にとって、法的正論よりもエネルギー供給の継続が優先される局面だ。
ホルムズ海峡情勢は暗号資産市場にも複雑な影響を与えている。紛争激化時の2026年3月初旬、ビットコインは7万4000ドルから約6万5000ドルまで急落した。
海峡封鎖の初期段階では、投資家が不確実性に備えるためボラティリティの高い資産であるビットコインを売却して現金化し、機関投資家も株式ポジションの追証対応のためビットコインを現金化することを余儀なくされた。
2025〜2026年の地政学的ストレス局面で金が8.6%上昇する一方、ビットコインは6.6%と逆行しており、「デジタルゴールド」としての機能はまだ完全には確立されていない。
しかし、逆説的な実需の側面も浮上している。イスラム革命防衛隊が海峡を通過する船舶に対して人民元または暗号資産での支払いを求めていることは、船主が数億ドル相当の貨物を運ぶために大量の暗号資産を購入しなければならないことを意味し、実体経済からのこの非弾力的な需要は、金融市場とは独立した形でビットコインの下支えとなっている。
長期的に見ると、ホルムズ海峡の長期封鎖は実際にはビットコインにとってプラス要因となり得る。戦争や制裁の脅威の下で伝統的な銀行システムが制限を受ける可能性があり、ビットコインがリアルタイムでの世界的な安全資産の避難先や越境送金の唯一のチャネルとなり得る。
地政学危機を契機とした暗号資産の実需創出という構図は、市場参加者にとって新たな分析軸となりつつある。日本の海運事業者が「支払い手段としての暗号資産」を真剣に検討せざるを得ない状況は、デジタル資産の国際的な実用化において1つの転換点を示している。
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