ビットコインは日本時間7日夜から急上昇を始め、8日早朝に9万2,000ドルに迫ったが、強い戻り売りに押されて反落。再び価格を戻しつつあるが、上値の重い展開が続いている。そんな中、オンチェーン活動からは「市場の落ち着き」を示すデータが複数確認されている。
オンチェーン分析企業、クリプトクオントのアナリストであるダークフォスト氏は8日、自身のXにて「投資家が次のトレンドに向けて準備を進めている」との見解を投稿した。
通常であれば、現在のような深い調整局面では投資家が大量の資産を取引所へ送金し、売却準備を進めるのが一般的だ。ところが今回の局面では、大手仮想通貨取引所であるバイナンスへの入金が驚くほど低水準にとどまっている。
特に注目すべきは、過去の調整局面との対比だ。2024年4月、ビットコインが73,800ドルの高値を更新した直後には、バイナンスへの暗号資産流入量が急増し、全コイン合計で約200M規模を記録した。同年12月、10万ドルを突破した局面でも同様に資金が取引所に殺到している。
一方今回の調整では、より深い下落幅にもかかわらず流入量は当時の約5分の1レベルにとどまり、変動率も低水準で推移している。この状況から「投資家は売却を急いでおらず、むしろ長期保有する意思を固めている」とダークフォスト氏は分析する。
「この異例とも言える落ち着いた投資家の行動は、調整局面における非常にポジティブな兆候の一つとなる可能性がある」と結論付けた。
オンチェーン分析アナリストのオンチェーン・マインド氏は「ビットコイン市場は、まだ本格的な弱気相場に突入していない」との見立てを共有した。
マインド氏が着目したのは、市場へ流入・流出した資本量を基準に、相場の勢いを明確に示すとされる指標Realised Capital Flow(実現資本フロー)だ。過去、本格的な弱気相場・暴落・投げ売りの局面では、いずれもこの実現資本フローがマイナスに転じた。
一方現在の局面では、価格調整が続く中実現資本フローが依然としてプラス圏を推移。ピーク時と比べれば勢いは落ちているものの、資本流入は継続していると指摘している。
以上の状況から、相場はまだ「本格的な弱気相場に入っていない」と考えられ、今後再び強気トレンドに入る可能性がある。ただ、逆に言うとまだ下値余地があるとも受け止れるため、引き続き急落リスクへの警戒が必要な局面ともいえる。
オンチェーンデータのSpot Taker CVD(累積取引量デルタ)は、約2週間にわたり中立状態を示している。
出典:CryptoQuant(Spot Taker CVD)
累積取引量デルタとは、市場買い量(テイカー買い)と市場売り量(テイカー売り)の90日間分の累積から相場の方向性を測る指標で、グリーンは買い優勢、レッドは売り優勢、グレーは中立状態を示す。
過去のデータを見ると、中立状態が1カ月以上継続した場合、多くのケースでトレンドが大きく転換している。今回も引き続き中立状態を維持することで、市場センチメントにポジティブな影響を与える可能性が高い。
仮想通貨市場は依然として方向感のない展開が続いているが、オンチェーンデータからは投資家の静観または中立的な姿勢がうかがえる。ただ、日本時間10日・11日にはFOMCが控えていることもあり、直近は乱高下を起こす可能性がある点に注意が必要だ。
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