●CLARITY法案を前に、ビットコインは売却されず、取引所流入は限定的にとどまっている。
●SOPRは低位で安定し、利益確定よりも「動かさない選択」が優勢な構造を示している。
●オンチェーンは、ビットコインが投機資産から制度資産へ移行しつつある兆候を映している。

米上院銀行委員会は2026年1月15日に暗号資産市場構造法案(CLARITY法案)のマークアップ(条文審議)を予定しているが、この動きは短期的な価格変動を狙ったイベントというより、ビットコインが米国の制度の中でどのように位置付けられるのかを左右する、極めて重要な転換点といえる。規制の行方が注目される中、オンチェーンデータはすでに価格に先行する形で、市場参加者の行動変化を映し出している。

まず注目したいのが、取引所への資金移動を示すExchange Netflowだ。一般に、規制を巡る不透明感が高まる局面では、投資家はリスク回避のためにビットコインを取引所へ移動させ、売却に備える傾向が強まる。しかし、今回のCLARITY法案を巡る局面では、そのような大規模な流入は確認されていない。取引所への流入が限定的であることは、市場がこの法案を「売る理由」として捉えていないことを示している。

次に、SOPR(Spent Output Profit Ratio)を見ると、この状況はより構造的に理解できる。SOPRは、実際にオンチェーン上で移動したビットコインが利益確定か損切りかを示す指標だが、現在は1付近、あるいはやや下回る水準で推移している。これは、利益確定売りが活発化していないだけでなく、そもそも利益を伴うオンチェーン上の移動自体が少ないことを意味する。

通常、重要なイベント前や価格上昇局面では、SOPRが明確に1を上回り、含み益状態での売却が増えやすい。しかし現在は、価格が一定水準で推移しているにもかかわらず、SOPRは低位で安定しており、積極的な利益確定の動きは見られない。これは売り圧力が弱いというより、市場参加者がビットコインを動かしていない状態、すなわち「判断待ち」の姿勢を取っていることを示している。

Exchange Netflowで見られる取引所流入の低さと、SOPRの停滞は整合的だ。市場はCLARITY法案を前にしてポジション解消に動いているのではなく、制度の方向性を見極めるため、あえてビットコインを保有したまま静観している。オンチェーン上では、短期的な投機的回転よりも、保有の固定化が進んでいる状態といえる。

この動きは、ビットコインの性格変化を強く示唆している。価格変動や規制リスクに即座に反応して売買される資産から、制度化を前提に中長期で保有される資産へと、扱われ方が変わりつつある。CLARITY法案は、ビットコインをCFTC管轄の「デジタル商品」として明確に位置付ける可能性を持つ法案であり、その方向性そのものが、市場参加者の時間軸を引き延ばしていると考えられる。

CLARITY法案の審議は、単なる価格イベントではない。米国が暗号資産市場を制度の内側に正式に取り込むかどうかを左右する、大きな分岐点である。その影響はすでにオンチェーン上に現れており、ビットコインは短期売買の対象から、制度化を前提に扱われる資産へと移行し始めている。

今後の焦点は、法案の可否そのもの以上に、この「売られにくく、動かされにくい構造」が定着するかどうかにある。オンチェーンデータは、価格が大きく動く前に、ビットコインの役割と市場での時間軸が変わり始めていることを、静かに、しかし明確に示している。

オンチェーン指標の見方

Exchange Netflow(取引所流入・流出):ビットコインが取引所へ流入する動きは、売却準備のシグナルとされる。規制や不確実性が高まる局面で流入が増えない場合、市場参加者がリスク回避よりも保有継続を選択している可能性を示す。

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SOPR(Spent Output Profit Ratio)*:実際に移動したビットコインが利益確定か損切りかを示す指標。SOPRが1付近で低位安定している場合、利益確定売りが活発化していないだけでなく、オンチェーン上の売買行動そのものが抑制されている状態を意味する。

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