ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)は、現物ETP(上場取引型金融商品)の登場によって一気にメインストリーム化した。投資の入り口が広がったことで、投資家にとって重要になるのは「暗号資産(仮想通貨)をどう評価するか」という視点だ。

金融サービス大手Charles Schwab(チャールズ・シュワブ)は1月20日に発表したレポートで、暗号資産を単なる値動きの対象としてではなく、プロトコル(ネットワーク)という仕組みとして捉えることを提案している。そして市場を3つのセクターに分類し、どこに価値が集まりやすいのかを整理する。

シュワブはまず、投資家への警告から入る。暗号資産は歴史が短く、規制も発展途上で、盗難や詐欺のリスクも現実に存在する。レポート内でも、「暗号資産投資には、元本がゼロになるリスクを含む」という前提が置かれている。

この前提を踏まえたうえで、シュワブは「価値がどこに蓄積されやすいか」を理解することが投資判断の基礎になると述べる。

暗号資産を3つのセクターに分けて考える

シュワブは暗号資産市場を、次の3領域に分類する。

1. 基盤ネットワーク

いわゆるレイヤー1ブロックチェーンで、暗号資産市場の中核にあたる領域だ。ここにはビットコインのような「価値保存型」のエコシステムと、イーサリアムのような「スマートコントラクト基盤」が含まれる。

シュワブは市場規模について、2025年末時点で暗号資産市場全体の時価総額が約3兆1690億ドル(約500兆円、1ドル=158円換算)であり、最大級のレイヤー1のネイティブ通貨が市場の78%を占めると説明している。つまり、暗号資産市場は依然として、土台(L1)が強い構造だ。

2. インフラ

インフラは、基盤ネットワークとプロダクトの間に位置するミドルウェア的存在だ。ここには、オラクル、ブリッジ、相互運用性、スケーリングといったツールが含まれる。

ただしシュワブは、この領域の弱点もはっきり指摘する。インフラ系は代替が効きやすく、競合が新しく出てきやすい。つまり、乗り換えコストが低いため、既存勢が長期的に価値を維持するのは簡単ではない。

3. プロダクト

ユーザーが直接触る領域で、暗号資産版のアプリに相当する。取引所、レンディング、ステーブルコイン、流動性提供、資産運用ツール、予測市場などがここに入る。

シュワブが強調しているのは、ユーザー接点を持つプロダクトは強い、という点だ。ユーザーが慣れたUIや仕組みには愛着と惰性が生まれる。結果としてプロダクトは業界標準になりやすい。

価値の偏り

シュワブは暗号資産市場を理解するために、ソフトウェア産業の構造をアナロジーとして使う。

クラウド(基盤)とSaaS(ユーザー接点)には価値が集まりやすい。一方で、その中間にいるインフラ企業は、重要ではあるが顧客との関係を持たず、価格決定力も弱くなりやすい。

この構造は暗号資産にも似ているという。

つまり、価値が集まりやすいのは基盤ネットワークとプロダクトであり、インフラは不可欠だが報われにくい構造になりがちである。

シュワブは、2025年末時点で月間アクティブユーザーを持ち、時価総額100万ドル超の暗号資産を300以上分析したという。

その結果として、インフラよりもプロダクトのほうが時価総額1億ドルを超えるものが多く、そして最も価値が集中していたのは基盤ネットワークだった。

言い換えると、暗号資産市場では「一番下の土台」が最も富を吸い上げやすい。

暗号資産を評価する4つの柱

シュワブは個別プロトコルを評価する枠組みとして、株式のグロース投資で使われる発想を応用し、4つの柱を提示する。

  1. ネットワーク効果
  2. 市場シェア
  3. スケーラビリティ
  4. トークノミクス

ネットワーク効果は「参加者が増えるほど価値が増える」仕組みで、業界標準になった時点で極めて崩れにくい。

市場シェアは、資産の性質により指標が変わる。ビットコインのような価値保存型なら時価総額、スマートコントラクト基盤ならTVL(預かり資産)が代表例になる。

スケーラビリティはTPS(秒間処理数)などで見られるが、シュワブはブロックチェーンが「分散性・セキュリティ・スケーラビリティ」を同時に最大化できず、2つを取ると1つが犠牲になる点にも触れている。

トークノミクスでは、最大供給量、供給の偏り、報酬設計、ガバナンスなどが重要になる。シュワブは「供給が安定またはディスインフレ的」「報酬がある」「保有が偏りすぎない」などがプラス要因になりやすいとする。

イーサリアムに当てはめる

シュワブはこのフレームを、例としてイーサリアムに適用している。

たとえば市場シェアでは、TVLが約3400億ドル規模に達し、次点を大きく上回るという整理がされる。ネットワーク効果では、2015年からの先行優位により業界標準のスマートコントラクト基盤として強い立場にある、と説明される。

一方、スケーラビリティでは15〜30TPS程度で混雑時に手数料が上がること、トークノミクスでは供給の焼却やステーキングがある反面、保有の集中が課題になり得る点が挙げられている。

また、最大のリスクとしてシュワブが挙げるのは競争だ。より高速なスマートコントラクト基盤が台頭すれば、ユーザーが移動し、長期的な地位に影響が出る可能性がある。

シュワブは最後に、暗号資産が万人向けの投資対象ではないことを繰り返しつつ、市場の現実としてこう述べている。

つまり、短期では市場が「ビットコイン中心」に振れやすい。しかし市場が成熟すれば、基盤・インフラ・プロダクトそれぞれの価値がより分化して評価される可能性もある。

|文・編集:Shoko Galaviz
|画像:Shutterstock


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