SEC(米証券取引委員会)のポール・アトキンス委員長は11日、米下院金融サービス委員会で証言を行い、投資家保護と資本市場の強化に向けた優先課題を説明した。暗号資産(仮想通貨)市場については、連邦レベルでの明確な規制枠組みの整備が急務であると強調し、CLARITY法の早期成立を議会に求めた。
アトキンス氏はヘスター・パース委員が主導する暗号資産タスクフォースの実績を高く評価し、「過去1年で直近10年間を上回る明確性を示した」と述べた。一方、「超党派の市場構造立法ほど、将来に備えてルールブックを強固にできるものはない」とも指摘し、行政指針だけでは限界があるとの認識を明確にした。CLARITY法が成立した場合、SECは速やかに実施に移す構えであると議会に伝えた。
議会の立法作業が進む間の「橋渡し」と位置づけるのが、CFTC(米商品先物取引委員会)のマイク・セリグ委員長との共同イニシアチブ「プロジェクト・クリプト」である。同プロジェクトでは、投資家とイノベーター双方に対し、規制上の義務を明確にするトークン分類の策定に取り組む。オンチェーンでの資産移転や取引を円滑に行えるよう、既存規制の適用除外措置の検討も進める方針だ。
投資家保護の観点では、2025年秋に設置した執行部の「クロスボーダー・タスクフォース」について言及した。2025年9月以降、価格や出来高の操作が疑われるアジア拠点の発行体14社に対し、株式の取引停止措置を講じたと報告した。「市場はグローバルであり、投資家保護もグローバルでなければならない」との立場を改めて強調した。
証言では資本市場全体の改革にも踏み込んだ。米国の資本市場は124.3兆ドル(約1京9,000兆円)規模で時価総額・取引高とも世界最大だ。しかし、上場企業数は1990年代半ばの7,800社超から約40%減の4,761社(2025年9月末時点)にまで縮小している。アトキンス氏はこの背景に「規制の肥大化」があると指摘し、開示の合理化、株主総会の脱政治化、訴訟改革の3本柱でIPO市場の活性化を進める方針を示した。上場企業全体で年次報告書の提出に費やすコストは年間27億ドル(約4,100億円)に上るという。
アトキンス氏は「SECは90年以上前に議会が設定した中核的使命に立ち返りつつある」と述べ、投資家保護、資本形成の促進、公正な市場の維持を改めて掲げた。暗号資産の連邦規制枠組みとともに、資本市場全体の規制の効率化がSECの新たな方向性を形成することになる。
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