● 現物需要の縮小が緩和し、Bitcoin Apparent Demandは−136,000BTCから−25,000BTCまで改善。
● Coinbase Premium回復とLTH売却減少により、市場の供給圧力は低下。
● ただしBull Score Indexは10と低水準で、現状は弱気相場の中のリリーフラリーと解釈される。
現在のビットコイン市場は、弱気相場の中で発生している戻り局面に位置している可能性が高い。短期的には価格が反発しているものの、市場構造としては依然として弱気環境が優勢であり、需給改善による一時的な反発フェーズとして理解するのが現時点では妥当と考えられる。
ビットコイン価格は直近で約73,000ドルまで回復し、約1カ月ぶりの高値水準に到達した。この動きの背景には、オンチェーン上で確認される需給バランスの改善がある。
まず注目されるのは、CryptoQuantが提供する「Bitcoin Apparent Demand(見かけ上の需要)」である。この指標は、新規供給と長期保有による吸収の差分から、実質的な市場需要の強弱を推定する指標として知られている。2026年初頭、この指標は約−136,000BTCまで落ち込み、現物需要の大幅な縮小を示していた。しかし現在は約−25,000BTCまで改善しており、需要縮小のペースが大きく緩和している。この変化は、2月初旬以降にビットコイン価格が下値を固め始めたタイミングと整合的であり、需給改善が価格の安定化に寄与している可能性がある。
同時に、米国投資家による現物需要にも回復の兆しが見られる。Coinbase Premium Indexは、2月初旬には大きくマイナス圏に沈んでいたが、現在は昨年10月以来の高水準まで回復している。この指標は米国市場とグローバル市場の価格差を示すため、米国主体の買い需要を測る代表的なオンチェーン指標である。プレミアムの回復は、米国投資家による現物需要が徐々に戻りつつあることを示唆する。
供給側の圧力にも変化が見られる。トレーダーの含み損は2022年7月以来の水準まで拡大しており、この状態では追加売却のインセンティブが弱まりやすい。過去の市場でも、含み損が極端に拡大した局面では売り圧力が鈍化し、価格が反発するケースが多く観察されている。
さらに、長期保有者(LTH)の売却ペースも大きく低下している。30日ベースの売却量は2025年11月26日の約90.4万BTCから、現在は約27.6万BTCまで減少している。これは2025年6月以来の低水準であり、市場に供給されるビットコイン量が減少していることを意味する。供給圧力の低下は、短期的な価格反発を支える要因として機能しやすい。
一方で、依然として市場の構造的な弱さも残る。CryptoQuantの「Bitcoin Bull Score Index」は現在10(100点満点)と、極めて弱気な領域に位置している。この指標は複数の市場指標を統合してトレンド環境を評価するものであり、現在の水準は歴史的に見ても弱気トレンドの範囲に該当する。
そのため、今回の価格上昇は新しい強気相場の開始というよりも、弱気トレンドの中で発生する「リリーフラリー」として解釈する方が、現時点のデータとは整合的である。
価格構造の観点では、オンチェーンコストベースも重要な参考点となる。Traders’ On-chain Realized Priceの下限バンドは、過去の弱気局面で上値抵抗として機能することが多く、現在の水準では約79,000ドル付近に位置している。さらに上位の主要コスト帯としては、Traders’ On-chain Realized Price本体が位置する約90,000ドル付近が確認される。この価格帯は、2026年1月の上昇局面でも抵抗帯として機能した経緯がある。
エックスウィンリサーチではこれまで、弱気相場では価格よりも需給構造の改善が先行するケースが多いことを指摘してきた。今回のオンチェーン指標の変化は、そのような市場構造の初期段階と整合する可能性がある。
現時点では、需給の改善と売り圧力の低下による反発局面が続く可能性がベースシナリオとなる。ただし、Bull Score Indexの低水準が示す通り、構造的な強気トレンドに転換したと判断する材料はまだ限定的である。
もし現物需要の回復が再び失速し、Coinbase Premiumが再度マイナス圏へ戻る場合、この反発は短命に終わる可能性がある。一方で、現物需要の継続的な回復と市場フローの改善が確認される場合、弱気構造そのものが徐々に変化していく可能性も残る。
現時点では、需給改善による弱気相場の戻り局面という見方がベースシナリオ。ただし、現物需要の継続的回復とオンチェーン指標の構造的改善が確認される場合、この見方は見直す必要がある。
オンチェーン指標の見方
①Bitcoin Bull Score Index(ビットコイン強気度指数):複数のオンチェーン・市場指標を統合し、現在の市場環境が強気か弱気かを総合的に評価する指標。一般的に60以上は強気環境、40以下は弱気環境とされ、市場の大局的なフェーズ判断に使われる。現在は10付近と極めて低く、価格が反発していても市場構造は弱気圏にあることを示唆。そのため短期上昇はトレンド転換ではなく、弱気相場内のリリーフラリーとして解釈されやすい。
②Trader On-chain Realized Price Bands(トレーダー実現価格バンド):短期トレーダーの平均取得コストをオンチェーンから推定し、支持線・抵抗線として機能する価格帯を示す指標。弱気相場では価格がこのコストライン付近に到達すると、含み損解消売りによりレジスタンスになりやすい。現在の構造では約79,000ドル付近が最初の抵抗帯、約90,000ドルが主要コストラインとして意識される。価格がこれらを回復・維持できるかどうかが、需給構造の改善を判断する重要な観察ポイントとなる。



