約10年ぶりに動いた500ビットコイン(約3500万ドル分)が3月24日、オンチェーン上で確認された。これらの資金は、2017年から永遠に失われたと考えられてきた、アイルランド人の大麻栽培者で有罪となったクリフトン・コリンズ氏の6000ビットコインの一部。
しかし、この動きは謎のクジラの復活ではない。法執行機関による操作であった。アイルランド犯罪資産局(CAB)はユーロポールと協力し、ウォレットの復号に成功し、ビットコインをコインベースへ移動した。
ダブリン出身のコリンズ氏は、もともと警備員や養蜂家として働いていたが、その後大麻の栽培に転じた。主に2011年と2012年、ビットコインが1桁ドルで取引されていた時期に大量購入した。購入資金は、10年以上にわたりアイルランド各地で展開していた大麻栽培事業の収益を使っていた。
資産価値が上昇する中、コリンズ氏は6000ビットコインを12のウォレットに均等に分散して保管。1つあたり500ビットコインを割り当てた。秘密鍵はA4用紙に印刷し、ゴールウェイの自宅にある釣り竿ケース内に隠していた。
2017年、コリンズ氏は交通検問で車内から大麻が見つかったことで逮捕された。その直後、家主が賃貸物件を片付け、持ち物をすべて埋立地へ廃棄。この際、釣り竿ケース——つまり唯一の秘密鍵も——焼却処分された可能性が高い。その後、コリンズ氏は自宅への空き巣被害も損失につながった可能性を指摘している。
アイルランド高等裁判所は2020年にビットコインの没収を命じたが、秘密鍵が失われていたため、CABは何もできず、ただ待つしかなかった。押収時の6000ビットコインは約5300万ユーロ相当。それが現在は約3億6000万ユーロにまで膨らんでいる。
BeInCryptoは、秘密鍵が永久に失われたと広く信じられていた2020年2月の時点で、コリンズ氏の失われたビットコイン資産について 報じている。
CABもユーロポールも、具体的な手法を公表していない。ユーロポールは、本件で「高度に複雑な技術的知見と復号資源」を提供したとだけ説明している。
ユーロポールの「復号」という表現は、手がかりにはなるものの、解釈の余地が残る。1つは、コリンズ氏が秘密鍵を弱いパスワードで暗号化したウォレットファイルに保存していた可能性。その場合、捜査当局はパスワードを総当たり攻撃で突破した可能性が高い。典型的な復号(デクリプション)の手法。
もう1つ考えられるのは、コリンズ氏が12個すべての鍵ペアを同じ欠陥ツールで生成していた場合。乱数生成が不十分だと、予測可能な出力になり、捜査当局でも鍵を再構成できる。それは技術的には暗号解読(クリプトアナリシス)に該当するが、捜査機関のプレスリリースではこの区別が曖昧になることも多い。
捜査当局は、今回の手法が他のウォレットにも適用可能であると楽観視している模様。もし全てに成功すれば、アイルランド政府は全6000ビットコインを回収できることになり、CAB史上過去最大規模の押収案件となる。

